審決取消訴訟判決(特許) 令和2年(行ケ)第10077号

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原文リンク

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要約

発明の名称

5-HT1A受容体サブタイプ作動薬

発明の簡単な説明

5-HT1A受容体に作用するカルボスチリル化合物を用いた医薬組成物で、特に双極性障害の治療に関する。

主文

特許第4178032号に関する特許庁の審決を取り消す。

経緯

原告は特許第4178032号を取得したが、特許請求の範囲の一部を訂正した。被告の共和薬品工業が特許無効審判を請求し、特許庁は一部を無効とした。原告はその決定の取消しを求めて訴訟を提起した。

争点

特許の実施可能要件及びサポート要件の適合性、特に双極性障害に対する治療効果の技術常識の有無。

原告の主張

原告は、5-HT1A部分作動薬が双極性障害のうつ病エピソードの治療に使用できるという技術常識が存在すると主張し、特許明細書にはその治療効果を示す薬理試験結果が記載されていると述べた。また、抗うつ薬の使用に関するリスクは医薬品承認審査で考慮されるべきであり、特許要件の判断には含まれないと主張した。

被告の主張

被告は、特許請求の範囲が双極性障害の治療対象を明確に特定していないと主張し、明細書にはカルボスチリル化合物が双極性障害のうつ病エピソードだけでなく、躁病エピソードにも効果があることが理解できるように記載されているべきだと述べた。また、抗うつ薬の使用による躁転のリスクを指摘し、技術常識が存在しないと主張した。

当裁判所の判断

裁判所は、5-HT1A受容体部分作動薬が抗うつ作用を持つことは技術常識であると認めたが、双極性障害のうつ病エピソードに対する治療効果については異なる見解を示した。具体的には、抗うつ薬が双極性障害の患者に使用される際、躁病エピソードの誘発などの有害事象が生じるリスクがあるため、全ての抗うつ薬が治療に適用できるとは言えないと判断した。また、医薬品の開発と承認審査のプロセスが説明され、特許出願時には、医薬が対象疾患に対して治療効果を持つことが当業者に理解できる必要があるとされた。

結論

本件発明は実施可能要件に適合し、特許は有効であるとの結論に至った。